研究内容
粒子間の接着作用に着目した地盤改良技術の開発
カーボンニュートラル社会実現への貢献や老朽化した社会基盤インフラの再生や長寿命化は地盤工学分野においても重要な課題です.このような背景のもと,今までの地盤材料には無かった機能を新たに付加した地盤材料の開発に取り組んでいます.
主な発表論文
- Joyce Nakayenga, Mutsuko Inui, Anasua Guharay, Toshiro Hata:Effect of limestone and granite stone powder on properties of cement-treated clay composites and their socioeconomic and environmental impacts,Construction and Building Materials,Volume 393(2023),https://doi.org/10.1016/j.conbuildmat.2023.132064.
- Toshiro Hata, Alexandra Clarà Saracho, Anasua GuhaRay, Stuart Kenneth Haigh:Strength characterization of cohesionless soil treated with cement and polyvinyl alcohol,Soils and Foundations,Volume 62, Issue 6(2022)
https://doi.org/10.1016/j.sandf.2022.101238. - Miyake, M., Kim, D. & Hata, T. Casein-assisted enhancement of the compressive strength of biocemented sand. Sci Rep 12, 12754 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-16879-9
エネルギー資源開発における地盤工学的課題の解決手法の開発
「燃える氷」として知られるメタンハイドレートは日本近海に分布しており,近い将来エネルギー資源としての利用が期待されています.このメタンハイドレートからメタンガスを生産する際,周辺の地盤強度低下に伴う生産障害などが懸念されています.この生産障害を抑制する一つのアイデアとして注目されているのが深海底にすでに生息している微生物の機能を促進させ結晶鉱物を析出させる「微生物固化」と呼ばれる技術です.研究室では,特殊環境に生息している微生物の機能を明らかにするとともに,地盤の性状(強度や透水性)制御に応用する手法について取り組んでいます.
主な発表論文
- Toshiro Hata, Alexandra Clarà Saracho, Stuart K. Haigh, Jun Yoneda, Koji Yamamoto:Microbial-induced carbonate precipitation applicability with the methane hydrate-bearing layer microbe,Journal of Natural Gas Science and Engineering,Volume 81(2020)https://doi.org/10.1016/j.jngse.2020.103490.
- Clarà Saracho, A., Haigh, S.K., Hata, T. et al. Characterisation of CaCO3 phases during strain-specific ureolytic precipitation. Sci Rep 10, 10168 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-66831-y
斜面災害の発生メカニズム解明および対策技術の提案に関する
地域で頻発する斜面災害への対応を目的とし,室内試験,大型水路実験,現場実証試験とさまざまなスケールで発生メカニズムの解明及び対策技術の提案を行っています.
主な発表論文
- Phanvongsa, N., Nakayenga, J. & Hata, T. Application of casein-combined enzyme-induced carbonate precipitation to mitigate shallow failure in cut slope. Bull Eng Geol Environ 82, 452 (2023). https://doi.org/10.1007/s10064-023-03470-3
不連続性岩盤の崩壊解析手法の高度化
社会基盤施設の安全性を確保し,社会機能を維持する上で,施設周辺の斜面の安定性評価は重要な技術の一つです.我々の研究グループでは,内部にき裂を有する岩盤斜面の崩壊挙動を精度よく予測するための,不連続体のシミュレーション手法の開発を進めています.岩盤の特性を精緻に表現し,かつ計算速度の面でも優れた実用性の高い技術の実現を目指しています.
主な発表論文
- 橋本涼太,菊本統,小山倫史:摩擦構成則の陰的積分アルゴリズムを導入した不連続変形法(DDA)の開発,土木学会論文集C(地圏工学),pp. 336-348, Vol. 75, No. 3, 2019.(令和2年度土木学会論文奨励賞)
- Hashimoto, R., Sueoka, T., Koyama, T. and Kikumoto, M.: Improvement of discontinuous deformation analysis incorporating implicit updating scheme of friction and joint strength degradation, Rock Mechanics and Rock Engineering, 2021.
- 橋本涼太,小山倫史:不連続性岩盤を模擬した金属六角棒積層の斜面模型の動的挙動評価(11)-改良型不連続変形法による予測解析-,第15回岩の力学国内シンポジウム論文集,pp. 447-452, 2021.
地盤・岩盤力学に基づく歴史的建造物の安定性評価
歴史的建造物の中には,その周辺の地盤の問題によって不安定化し,その歴史的価値の喪失の危機に瀕するものが多くあります.カンボジアの世界遺産であるアンコール遺跡や日本の城郭石垣を対象として,石積建造物の基礎や背面の地盤との相互作用による劣化メカニズムを,独自の力学シミュレーション手法や模型実験を使って研究しています.また,得られた知見を基にした設計手法を提案することで,建造物の価値を損なわない合理的な修復に向けた技術的支援を行っています.
主な発表論文
- Hashimoto, R., Kikumoto, M., Koyama, T. and Mimura, M.: Method of deformation analysis for composite structures of soils and masonry stones, Computers and Geotechnics, Vol. 82, pp.67-84, 2017.
- 橋本涼太,小山倫史,菊本統,三村衛:カンボジア・アンコール遺跡の石積構造物基礎の支持力特性に関する一考察,地盤と建設,Vol. 35,No. 1,pp. 137-144,2017.(平成29年度「地盤と建設」論文賞)
- 神谷圭祐,菊本統,橋本涼太,桑島流音,小山倫史:2016年熊本地震による熊本城石垣の変状の分析,自然災害科学,Vol. 37,特別号,pp. 1–16,2018.
建設機械と地盤の相互作用力学モデルの構築
2016年に国土交通省がi-Constructionの概念を打ち出して以降,建設分野では情報技術を活用したICT施工の技術開発が活発化し,それに伴い油圧ショベルをはじめ建設機械の高効率化や自動化・無人化を目標とした研究が増えてきました.しかし,機械の作業性に大きく影響する地盤との力学的相互作用に関する知見はまだ体系化されていません.本研究グループでは油圧ショベルを対象として,掘削中の土の抵抗特性とそのメカニズムを実験とシミュレーションで検討し,地盤力学に基づく性能評価技術の開発を進めています.
主な発表論文
- 掛水雅也,橋本涼太,土田孝,島津泰彦,沖本翔,山口拓則:油圧ショベルのバケットに作用する掘削抵抗に対する掘削深さの影響,令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会,No. III-439,2020.
- Hashimoto, R., Kakemizu, M., Shimazu, Y., Okimoto, S. and Yamaguchi, T.: Evaluation of resistive force on excavator bucket using NMM-DDA, Proc. of ICADD15, pp. 312-318, 2021.